あたしという人間 Episode1

●4人姉妹の3番目

 

あたしは2人のお姉ちゃんと妹。

女の子に囲まれて育ったの。

 

親は共働き。

小さい時からお姉ちゃんと遊んだり、妹の面倒を見ることが多く

常に女の子と接していたの。

 

お姉ちゃんは大きくなるに連れ、友達と遊びに行くことが多くなり

妹の面倒はいつもあたしがみていたわ。

 

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そのため、周りの子と遊べず友達が少なかったの。

 

高校生になり思春期真っ只中。

段々と家にいるのが嫌になってきていた。

「卒業したら働いてなるべく家にいないようにしよう」と心に誓っていたわ。

 

高校の時は、あまり勉強はせずに今まで友達と遊べなかった分

毎日のように遊んでいた。

 

「おにぃちゃん!!

いつ遊んでくれるの?」

 

まだ、5歳の妹は遊びたい盛。

「友達と遊ぶからもう、お前とは遊べないよ!!」

 

と突き返してしまったこと。

今でも後悔している。

 

妹にも私と同じ寂しい想いをさせていたの。

 

●小さな工場

 

高校卒業と同時に、父親の知り合いが働く電機メーカーの工場で働いたわ。

 

そこで出会った3つ上の経理の女性に恋をしていた。

少し遅めの初恋。

 

いつも8時45分に出勤してくる彼女に挨拶する。

そのために用もないのにデスクの近くをウロウロしていた。

 

今思えば、すごく怪しいしバレバレだったのかもしれないわね。

 

そんな想いを見透かしてか、休憩中に話しかけてくれるようになったわ。

 

「今度、ご飯にいきませんか?」

声が震えそうになるのをこらえて食事に誘った。

 

「やっと誘ってくれた…」

経理の先輩は笑って頷いてくれた。

 

それから、頻繁に会うようになり晴れて彼女と付き合うことになった。

初恋だけど、結婚も考えるくらい本気の恋だったわ。

 

●初恋は突然に

 

突然、2年ほど付き合った彼女に

 

「別れよう」

 

と言われた。

 

「もう飽きちゃったの」

 

詳しい理由は告げられないまま

彼女はあたしを避けるようになった。

 

訳がわからないし、結婚も視野に入れて付き合っていたのもあって

ぽっかり穴が空き、抜け殻のように何もする気になれなかった。

 

 

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むしゃくしゃしたまま、この苛立ちを抑えたくて

一軒のBARに入ったわ。

 

カウンター越しに、マスターが黙って話を聞いてくれた。

あたしが一方的に話しているだけで、黙って話を聞いてくれるマスターの優しさに

包まれて心が少し軽くなったの。

 

数日後の会社からの帰り道。

ミスをしてしまい少し帰りが遅くなり、疲れ切って歩いていると

とんでもない光景を目にしたわ。

 

上司と経理の女の子が一緒に歩いていたのよね。

 

彼女の同僚の女の子にあとから聞いた話。

 

上司は

「この会社にいたいなら僕と一緒にいるのがいいよ」

 

と彼女に脅しのように言っていたそうよ。

 

ドラマのような世界よね。

 

ドラマなら、彼女はあたしの元へ戻ってきてくれるはず。

でも現実は違った。

恋愛ではなく仕事をとったの。

 

「もう誰の顔も見たくない」

仕事も休むようになった。

 

そんなある日、ふとあのBARのマスターの顔が目に浮かび

立ち寄ったの。

 

今までに色んな経験をし、色んな話を聞いてきたマスターは

多くは語らない。

 

話しを聞いてただ頷いてくれる。

 

それだけなのに、また心が軽くなる。

 

そこから、マスターやこの仕事に次第に惹かれてった。

頼み込んでそのBARで働かせてもらったの。

 

それがあたしとBARの出会い。

 

●新しい自分

 

BARではいろんな人との出会いがあるわ。

普段生活していたらなかなか出会えない人ばかり。

 

その中には、社長さんや浮気された男の人

会社をクビになりそうな人、結婚間近な人。

 

いろんな人がいたわ。

 

その中でも初めて出会ったのが"ゲイ"のお客さんだったの。

 

その人は、自分のお店を持っている人で

マスターとも20年近くの付き合いだそう。

 

あたしが、ここで働き始めたきっかけも生い立ちも全部話した。

 

「今度、私が未知の世界を体験させてあげる」

 

と言って帰った。

 

圧に圧倒されてしまった。

「なんか凄い人だなぁ」

 

そう思っていると、勢いよくさっきの人が戻ってきて

 

「あら、時間言うの忘れてた!!明日20時にこのお店の前集合よ〜!!」

 

と言ってまた嵐のように去っていったわ。

 

次の日あたしはビクビクしながら待っていると

 

「やっほ〜ちゃんと来たのね!」

 

と15分ほど遅れて昨日の人が現れた。

 

「自己紹介まだだったわね。あたし、トオル。よろしくね!」

 

とこちらが話すスキもなく話を続けていた。

 

「今日はゲイバーにいくのよ!!」

 

と言って勢いに圧倒されながら連れていかれた。

 

何もかもが初めてで、こんな世界があることも知らなかった。

 

マスターも経験豊富だけど

 

ゲイの人は偏見や差別を乗り越え、更に壮絶な経験をしている人が多く

「あんたの悩みなんてミジンコレベルよ〜」

と笑われた。

 

壮絶な過去があるのにすごく楽しそうで明るいみんなに

どんどん惹かれていったわ。

 

明るくて時に厳しくでもその中で愛がある。

少しずつ、ゲイの世界に興味がでてきた。

 

今思えば、昔から"その気"があったのかもしれないわね笑

 

●あたしは釜宮幸江

 

ゲイバーの魅力にハマってきて、今までお世話になったマスターの元を離れて

ゲイの世界へ飛び込んだ。

そう、あたしの誕生よ!!!

 

ちょっとずつ貯めていた貯金で一人暮らしも始めた。

 

4年ほどで3つのお店を渡り歩きいろんな経験をさせてもらったわ。

初めての彼氏もできたの。

 

毎日が楽しくていつしか自分のお店を持ちたいと思うようにもなった。

 

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その日暮らしみたいなお給料で、馬鹿騒ぎして朝まで飲んで

を繰り返していたわ。

 

お給料は決していいものではないから

切り詰めながら少しずつ貯金をした。

 

お金がないあまりごはんを食べない事もあり

空きっ腹で飲んで潰れてしまう事が増えたの。

 

当時のママに心配されて、お店を持ちたいこと

貯金のためにご飯を食べれない時があること

全部話した。

 

「水臭いわね!!それ1番にあたしに相談するべきでしょ!!」

 

と言われ

 

 

明け方に食べきれないほどのご飯を注文して

 「何かあったらあたしに頼りなさい!!あんたのママはあたしよ!!」

 

と言われて涙をこらえながらご飯をお腹いっぱい食べたのを覚えてる。

嬉しくて、涙を堪えるのに必死で味なんて覚えていないわ。

 

そこから、節約をしながら3年の月日が経ち

やっとの思いでお店を出すことができた。

 

あたしという人間 Episode2 - 釜宮塾